神風戦隊アラシ 第7話
ぼんやりと目を開けると、そこは見知らぬ場所だった。
自分の部屋でもなければ、あの趣味の悪い秘密結社の中でもない、ましてや最近よくお邪魔する大野の部屋でもなかった。
立ち上がろうとして、手を伸ばそうとすると、何かが阻んでその行動が出来ない。
何故?と頭を振って覚醒を促そうとすると、ズキリと頭が痛んだ。
「いってぇ!」
櫻井は、立ち上がろうと力を入れた体をまた地面に落とす。
はからずもその痛みで一気に覚醒した櫻井は、どうにも動きにくい自分の腕を見ると、後ろ手に何やらで縛られているのが見えた。
「なんだよこれ!?」
よく見てみるとしめ縄のようなそれは、櫻井の手首に食い込むくらいぎちぎちにまわされている。
動かすとすれて痛い。
ええと、何がどうなってるんだっけ?
とりあえず自分の思考を落ち着けるために櫻井は、2度深呼吸を行った。
ぼんやりと思い出されるのは、かなりのスピードとコントロールで飛んできた野球のボール。
まっすぐ自分に向かって飛んでくる映像が頭に思い浮かんで。
ああ、そう言えば、アレがぶつかったのか。
だからさっき、頭が痛かったんだ、と妙に納得して、それからやっと周囲を見渡した。
気を失う前の状況から察するに、ここはKAT-TUNに関する場所なのだろうなと思う。
一人で戦わされて(本当は何も戦わないままボールで気絶したのだが)、負けてしまって、連れて来られたのか。
殺風景な倉庫のような部屋にはどこか別の部屋へ通じる扉と、馬鹿高い壁の上の方にある窓以外は何もない。
櫻井の腕は先ほど確認した、縄のようなもので縛られているが、足の方は特に何がしてあるわけでもなかった。
櫻井は、なんとか腕に力を入れて立ち上がると、ひとつだけある扉へと歩み寄る。
身体でなんとか、ドアノブを回して押してみるが、案の定それには鍵がかかっていた。
さて、どうしようか。
ぴょんぴょんと飛ぶようにして、扉の小さな窓をのぞきこんでいると突然、扉が音を立てて櫻井にむかってきた。
ゴンっと良い音がなる。
「あ、ごめん!良い音なっちゃった」
扉を開けた人物は、額にAの文字をつけて陽気にあやまった。
「ってぇなぁ!!!」
「イヤー悪い悪い。でもあんたがそんなとこで立ってるからさ」
「いってぇし…マジ泣きそう」
今日は踏んだり蹴ったりだ…となまじ本気で櫻井は涙目になる。
「まぁまぁ」
「まぁまぁ…じゃねぇし、ていうか腕もいてぇし…外せよ」
そう言って櫻井は後ろ手に縛られている腕を差し出した。
するとKAT-TUNは今気がついたように、笑う。
「ああ、そういやつけてたっけ?ごめんごめん」
そういうと、あっさりと腕に巻きついた縄を外しにかかる。
櫻井はそんなKAT-TUNに拍子抜けした。
「え?いいのかよ?」
「別にいいよ。なんとなく、つけてただけだし」
「はぁ?」
「あ、もう帰っていいよ。別に用ないから」
「え?」
「なんとなくあの格好であそこに気絶してたらかわいそうかなって思って連れてきただけだから」
…なんて良い奴らなんだ!
櫻井は解いてもらった腕で、KAT-TUNの肩を叩いた。
自分たちはいつもKAT-TUNをやつけても恥ずかしい格好をさせたまま放置し、あまつさえ落書きをするという暴挙にまで出ているのに。
そんな自分たちよりも、よっぽど良い奴らじゃないか。
櫻井は涙を流しそうになった。
「じゃあ、まぁ、気をつけて帰ってね?」
「ありがとう!この恩は忘れない!」
櫻井は、KAT-TUNの手をとると、1度握り締めて、そして帰っていった。