aporia
あれからしばらくはピンの仕事が多かったことにより、大野に会うことがなかった。
櫻井は内心ほっとしながらも、ずっとあの日からもやもやとする思いを胸に抱えていた。
だって、大野が。
櫻井には触れないくせに、松本にはあんなに優しく触れるから。
自分にはしないそれを、松本にならするのか、と思うと苛立ちが押さえきれなかった。
―――――大野くんは、俺のことが好きだって言ったくせに。
まるで、小学生の感情だと思う。
こんな風に思う自分が恥ずかしかった。
大野に告白されて、大野が自分のことだけを見ていることに、自分は優越感のようなものを感じていたのだ。
大野は櫻井にとって心地よくて、だけどそれが、実は自分だけに向けられた心地よさじゃないって気付かされた。
松本だって、そして相葉や二宮だって、同じ心地よさを与えられているんだ。
それに気がついた途端、頭の奥が熱くなった。
そしてカッとなって、大野に八つ当たった。
そして、多分、きっと。
傷つけた。
こんなつもりじゃなかった。
もっと大切にしたかった、大野との今の関係を。
…あやまろう。
櫻井は、思った。
あやまって、元に戻ろうとそう思った。
未だ答えは出ないけれど、こんな風にして崩したかったわけじゃない。
だから、あやまって、前の関係に戻りたい。
櫻井はその時、単純に謝れば元に戻れると信じていた。
大野も、前の関係に戻りたいはずだ、と。
けれど、櫻井は勘違いしていたのだ。
大野が求めているものと、自分の求めているものを。