大きすぎるよ





がぁがぁと、寝息を立てて楽屋の隅で寝ている大野に近づく。
そうしてその横にあったパイプ椅子に腰を下ろして、その寝顔を見つめた。
口を大きく開けて、さらに薄く開いた目。
まるで、アイドルではないみたいなその寝顔に、櫻井は自然と微笑を浮かべる。
昼寝でもしている親父のようなその格好。
時折あがるそれに不似合いな、子供みたいなぐずる声にさらに眉が下がった。

いつからこんなに好きになってしまったのだろう。
ふわふわと揺れる髪の毛にそっと触れながら、櫻井は思いを馳せる。
最初はどちらかと言えば苦手だったはずなのに、気がつけば甘やかしたい、甘えて欲しい、そんな風に思える存在になっていた。
一体いつから、櫻井はこの背中を追いかけようと思い始めたのか。
そしてその追いかける背中がとても大きなことに気がついたのも、いつからだったのか。
それはまるで空気を吸うみたいに自然に入ってきたものだから、わからなかった。
ただわかっているのはその背中を未だ超えることも、追いつくことすらもままならないということだけだ。

年齢にしてみればたったひとつ、たったひとつしか違わないのに。
自分には持っていないものをたくさん持っている大野。
たったひとつの年齢がこんなにも櫻井と大野に、距離をもたらすとは思ってもみなかった。
いや、ひとつだからこそ、なのかもしれない。
相葉や二宮や松本くらいに離れていれば、年齢なんて逆に気にならないものだったのかもしれない。
たったひとつの壁が自分と大野の間に高く、大きく聳え立っている。

「…あんた、大きすぎるんだよ」

そっと、頬に手を当ててつぶやく。
ううんとうなる声が聞こえて、それでも頬を撫でることをやめずに、動かす。
こんなことをしていたら、起きてしまうだろうか。
そう思いながらも動かす手は止めない。
起きるなら、起きてしまえばいいのだ。
ゆるりゆるりと頬を撫でる。
くすぐったそうに顔が揺れるのを見ながら、自分の胸が音をたてているのをゆっくりと聞いていた。
何か抑えきれない衝動が突き上げてきたのがわかって。

そして、そっと、唇を寄せた。

その瞬間。

「…んぅ…しょぅ…く…」

互いの距離が、ゼロになろうというその時に、呟かれた言葉。
起きたのかと思って、あわてて身を後ろに引くと。
自分の名前が出たその口からは、むにゃむにゃとなにやら意味のない言葉を発していた。

「…寝言かよ」

櫻井はどっと力を抜く。
なんとなく滑稽な自分の姿を思って笑いがこみ上げる。

やはり、櫻井にとって、大野は大きすぎる存在だった。