涙はそのあとで
自分は相当泣き虫だと思う、ここ最近は特に。
この夏は、多分人生で一番泣いたのではないかと思うくらい、涙を流した。
メンバーの前で泣くのなんて、昔は出来なかったのに今ではすぐ泣いてしまう。
それだけ気が緩んだというか、慣れたということなのだろうけれど。
コンサートの終わり、Jrのみんなが泣いているのを見て、もらい泣きした。
なんだか本当に最近は涙腺が弱くて、ごしごしと手の甲でそれを拭っていたら、横からそっと暖かい手が伸びてくる。
ふっとそちらを向くと、困った顔をして笑った櫻井が、大野を見ていた。
口ぱくで何か伝えられたけど、わからなくて、首をかしげる。
なんて言ったの?と聞き返すと、さらに櫻井は困った顔をして。
「…後でね?」
と言って、大野の背中をぽんぽんと二回叩いた。
ホテルの部屋に戻って、シャワーを浴びる。
寝る体勢を整えてベッドにドスンと寝転んだ、途端、ドアから控えめにノックの音が聞こえた。
不意にその音に時計の針を見て、その針が深夜の1時過ぎをさしていることに気がついて、首をかしげる。
いったいこんな時間に誰だというのだろう?
大野は立ち上がると、ゆっくりとドアに近づいた。
そして、誰かを確かめることもなく、そのドアを開ける。
開けた先には、櫻井が立っていた。
櫻井は驚いた顔をして、突然開いたドアから出てきた大野を見た。
そうして困ったように口を開く。
「ごめん、遅くに。入っても、良い?」
別段断る理由も、何もなかった大野は、櫻井を招きいれた。
「何か飲む?」
と、珍しく気を使って大野は、櫻井に問いかけるが、櫻井は首を振った。
おかまいなく、と小さく声を出して、それからベッドに腰をかけた。
大野も、ぼんやりとそこへつったっていても仕方がないのでその横に静かに腰を下ろす。
下ろした途端、櫻井が大野の顔を覗き込んで、目をじっと見つめた。
「………なに?」
「目、やっぱりちょっと赤いね」
「え?そう?」
大野は、言われて目をこするようにして手を当てる。
櫻井はそれを見て慌てて制するように手をつかんだ。
「だめだよ、擦っちゃ。もっと赤くなっちゃう」
そういってそのまま、櫻井は唇を大野の目に寄せる。
「ん…翔くん?」
ちゅっちゅっと音を立てるように目元に何度かキスを落とす櫻井は、大野の呼びかけには答えない。
大野は眉毛を少し下げて困った顔をしながらも、黙ってその行為を受け入れる。
しばらくそれは続いたが、落ち着いたかのようにやっと櫻井は大野の手を離した。
「…どうしたの?」
手を離した途端、うつむき加減になった櫻井の目を今度は大野が覗き込む。
「…あんま人前で泣かないでよ」
「え?」
「泣いても良いけど、俺と2人になってからにして」
「なんで…?」
「…抱きしめてあげらんないから」
櫻井は押し倒すように、大野を抱きしめる。
大野は少しだけ驚いた表情になって、それから笑みをこぼして櫻井の背中に手を回した。
「…わかった、できるだけ約束するよ?」
涙は、翔くんと2人になった、そのあとでって。