それが最後じゃない
好きって気持ちはどこから来るの?
そう聞いたら、櫻井が困った顔をした。
まるで、母親が子供に答えにくい意外な質問をされた時みたいな顔。
赤ちゃんはどうやってできるの?とか、そういうこと聞かれたときのような。
母親はそういう時、うまく本当のことを教えるか、やんわりと流してしまうか、はたまた嘘をつくけれど。
櫻井は一体どうするのだろうか。
「…急にどしたの?」
とりあえず、こちらの真意を問う行動に出たようだ。
どうしたもこうしたもない、ただ知りたいだけだ。
「別に、なんとなく。この気持ちはどっからきたのかなぁと思って」
「…わかんねぇよ、そんなの。智さんはどこからきたと思うわけ?」
聞き返されてみて、頭をひねる。
わからないから聞いているのに、聞き返されたって困る。
「…わかんねぇ」
「じゃあ聞かれても俺もわかんないよ」
「翔くん、頭いいからわかるかと思ったのに」
「そういうのとはまた違うでしょ」
そう諭されるように言われて、ちょっとだけむっとする。
なんとなく意地になってここで怯むもんかとつっかかった。
「じゃあ、好きが来たらその次は何が来ると思う?」
「はぁ?さっきから一体何なのさ?」
「…いいから答えてよ!」
「…愛じゃねぇ?好きの次は愛」
「じゃあ愛の次は?」
「………しらねぇ」
櫻井はまたさらに困ったような顔で大野を見た。
大野はその答えに納得がいかず、拗ねたようにほほを膨らませる。
「智さん?なんなの?一体」
「…翔くん。翔くんは今、俺を好きなの?愛してるの?」
「はぁ…!?」
「いいから、答えろよ!」
またさっきと同じ押し問答を繰り返して、段々訝しげな表情になってきた櫻井につめよる。
櫻井は、ため息をついて、大野の肩を引き寄せた。
「…愛してるよ」
耳元で櫻井は囁く。
大野はその言葉を聴いて、引き寄せられた櫻井の身体を押し返した。
「な、なに?」
「愛してるの?…でも、翔くんは、好きの次は愛で、愛の次はわかんないんだよね?」
「え?ああ、うん?」
「…愛は最後なのかな?」
大野はポツリとこぼしはじめた。
「好きの次は愛で、愛の次はもう、なにもないのかな?」
「智、さん?」
「もうそれで終わっちゃうのかな?」
大野は、なんとなく泣きたい気持ちになって、顔をゆがめた。
櫻井はそんな大野を、今度は先ほどよりも強く引き寄せた。
「馬鹿だね、智さんは」
「…しょう、くん?」
「終わらないよ。あのね、愛の次は何か、俺にはわからないけど」
「…うん?」
「それが最後じゃないよ、きっと。もっとずっと続いていくんだ」
櫻井はそう言いながら大野の背をぽんぽんと撫でるように叩いた。
大野はその温度に安心する。
「最後じゃ、ないかな?」
「少なくとも、俺は最後にはしない。消えてなくなったりしないよ」
大野の不安を拭い取るように櫻井は、回された腕に力を込めた。