幸せになれば良いのに、と影で願っていた。
だから、別れたと聞いた時は本当に驚いて、自分のことでもないのにとてもショックだった。
2人を見るのが好きだった。
相手を愛しむように見つめあうその瞳も、間に広がる暖かく包まれるような空気も。
全てが好きだった。

いつまでもいつまでも一緒にいるんだと、そう思っていた。








「別れたんだ」

そう言った大ちゃんの顔は、悲しんでいる風ではなかった。
かと言って喜んでいるわけでもなかったけれど。
どちらかと言えば、言われたこちらの顔の方が歪んでいたかもしれない。

「そんな顔すんなよ」

と苦笑いをして頭を小突かれる。
どうして、とかすれる声で聞いたら、今度は困ったような笑顔を向けられた。

「…好きだから、だよ」

返って来た言葉は、別れの理由とは正反対に思えるもの。
好きならなんでだよと思うけれど、大ちゃんは仕方がないことなのだと笑う。
何が仕方ないんだ。
俺にはわからないと告げると、また苦笑いされた。
ああそんな笑顔はやめてくれよ、悲しみを含んだそんな表情は見たくはない。
あの人のことを思う時の、大ちゃんの顔はもっと、綺麗で、楽しそうで、幸せそうだったじゃないか。
そんな悲しみを隠すような、表情、似合わないよ。
泣きたいような気持ちで見つめたら、身長差の分、少しだけかかとをあげて、頭を撫でられる。

「ごめんね」

そういわれて、どうして俺が慰められているんだろうって思った。
悲しいのは大ちゃんの方なのに、あやまるのは大ちゃんじゃないのに。

「松潤、色々気にかけてくれたのに、駄目になって、ごめんね」

あやまらないで、あやまらないでよ。
どうしようもなく切ない気持ちになって、大ちゃんに手を伸ばした。
ぎゅっと抱きしめると、何の抵抗もなく自分の腕の中に納まる。
自分より小さな身体が、いつも以上に小さく思えて、ひどく悲しかった。

「泣けよ」

顔を自分の胸に押し付けて、強要する。
きっとこの人は、泣いてない、一度も、あの人とお別れをしてから。
それがもどかしくて、力任せに抱きしめた。

「…泣かないよ」

それが強がりなのか、気遣いなのか、わからないけれど、大ちゃんは言い切って。
それがまたひどく悲しくて、代わりに泣いた。

「泣くなよ、松潤」

背中をポンポンと撫でられて、その手がひどく優しくて。
抑えてきた気持ちが、爆発するのがわかった。
今言うのが、とても卑怯なことだとわかっていたのに。

「…俺、大ちゃんが好きだよ」

腕の中の人は、きっと今、ひどく困った顔をしているに違いない。
困惑したように小さく俺の名前を呼ぶのが聞こえた。
それに返事はせずに、また抱きしめる腕に力を込める。
悲しそうに肩が揺れたのがわかって。

「…ごめんね、松潤。ごめんね…」

胸のあたりで聞こえた声を掻き消すように、目を瞑った。