さよならと言い出したのは、僕だったのか、君だったのか。
今ではもうよく思い出せない。
ただあの幸せだった日々が、幻になるのかと思うことだけが、せつなかった。
すれ違っていると初めて感じたのは、もう随分と前のことだった。
一緒にいることにこだわりすぎて、どちらも駄目になっていくのがわかって。
好きだった、僕も、翔くんも、間違いなくお互いが好きだった。
男同士だとか、仲間だとか、そんなこと、どうだって良いくらい、好きだったのに。
何が間違えていたのだろうか。
お互いを苦しめる恋は、辛いだけだって、悟ってしまって。
好きなだけじゃ駄目なんだ、と思った。
別れが来る日を、ずっと想像していた。
始まった時から終るのを予測する恋なんて、馬鹿みたいかもしれないけれど。
いつか、この恋は消えてなくなるのだと知っていた。
何故かと、問われてもわからない、ただずっとそうなると思っていた。
かすかな不安がいつもつきまとっていて、幸せなのにいつだってどこか胸の奥がジクジク痛んでいた。
だからずっと、それをひた隠しにして笑い続けてきた。
胸の痛みなんて気付かないフリをして、幸せな笑顔だけを翔くんに見てもらいたかった。
仕事以外で、2人っきりでなんて、あまり自由に会うことも出来ないから、そんな時くらい笑顔でいたくて。
無理してでも、どんなに辛い時でも笑顔を振りまいた。
それは翔くんもきっと同じだった。
いつも翔くんは笑顔だった。
最後の最後まで、笑顔だった。
最後の最後は、悲しい笑顔だったけれど。
多分、きっとそれは僕も同じ。
泣くのだけは許されない、悲しい別れだと思いたくないから。
お互いのためだと言い聞かせて笑って別れた。
絶対にこれからだって泣かない、そう決めて、1度も別れの日から涙を流さなかった。
だけどそんな僕を見た松潤が。
「泣けよ」と言ってくれた。
すごく、すごく嬉しかった。
「好きだ」とも言ってくれた。
こんな僕に、好きだと。
すごく、すごく嬉しかった。
だけどごめんね。
僕にはまだそんな熱いまなざしに、立ち向かう力はないんだ。
翔くんの熱が僕の身体をずっと、まだあたため続けているから。
その熱が消えるまでは、他の誰のものにだってなれない。
まだ冷たい水を頭からかけられても、氷がいっぱい入った水槽に飛び込んでも、きっと熱は消えない。
くすぶったまま胸でつっかえて、癒えそうにない。
きっとそれは僕の心が、まだ、翔くんを欲しているからだって、わかっているけれど。
もう望みがない恋だと、わかっているのに。
しがみつくのは間違っているのかな。