独占欲で頭がもたげそうだった。
いっそ閉じ込めておければ、なんて幾度となく思って。
だけど閉じ込めておけるような人じゃないから。
綺麗な瞳で、とても綺麗な笑みを浮かべるその顔を曇らせたくはないから。
だから俺も笑ってた。

例え心で泣いていても。








智さんと俺が別れてから、松本がずっと智さんの傍にいる。
片時も離れないように、常に傍にいて包み込むような愛を送り続けている。
それはついこの間までの自分のポジション。
こみ上げてくる怒りに近い感情に、ぎゅっと手を握りこんだら、爪で手のひらが赤くなった。
嫉妬する資格なんて、もうないのに。
今でも好きだと心が叫んでいる、今すぐ引き寄せて抱きしめて、耳元で捨てきれない思いをぶちまけたいと。
だけれどそれは出来ない。
どうしてこんな風になってしまったんだろうといくら考えても、答えは出てこなくて。
全てをゼロにして初めからやり直せたらと、幾度も思ったけれど。
何度考えても行き着く先は別れしかなかった。
ああ、なんて悲しい。
お互いに好きなだけじゃ駄目だと気が付いたのはいつのことだったろうか。
笑い合っている笑顔が曇っていると思い出したのはいつのことだったろうか。
こんな顔をさせるために付き合ったんじゃないって、そう思って別れを決意して。
普段はわからない智さんの気持ちがああいうときだけ見えてしまうのって、どうしてなんだろうって思った。
考えている事が同じ過ぎたのかな。




どこかで無理をしていた。
ずっと笑顔でいたかった。
だけどそれは無理なのだ、そうわかっていたのにもかかわらず、無理をして壊れた。
松本ならば、きっと、もっと違う愛し方。
あいつは良い意味で我侭だから、ちゃんと思ったことをはっきりと伝える事が出来るんだ。
俺には出来なかったそれが簡単に出来てしまう。
俺だって、もっとたくさん我侭だってなんだって、言いたい事があった。
だけど、だけど。
怖かった。
我侭でがんじがらめにして、智さんを閉じ込めてしまうから。
自分でも抑えきれない欲望が、自分の中にあって、それをぶつけてしまったら。
自分の好きな智さんじゃなくなってしまう気がしていた。
あんなにも自由な人を。
壊してしまうのが怖かった。



ちらりと視線を智さんに映す。
やっぱり松本が寄り添っていて、そして楽しそうに笑っていた。
久し振りの本物に近い笑顔。
俺が消してしまった表情が、少し戻っていた。

だから、これでいいんだ、そう思って。
静かに目線を外した。