無理矢理心に割り込もうとする行為と。
無理矢理心を閉じ込めようとする行為。
どちらの方が正しくて、どちらの方が間違ってるなんて。
そんなのきっとない。
「一緒に帰ろう」
ただ、それだけ。
俺が大ちゃんに出来る、今最大の誘い文句。
これ以上の言葉はきっと、今動けない彼には逆効果だから、決して口にはしない。
口にしてしまったら、逃げられてしまうから。
無理に手に入れたいわけじゃないけど、今1人にするのはどうしても出来なかった。
1人になったらきっと泣けないから。
いつか大ちゃんが泣く時があるとすれば、それは俺の前でしかありえないと思う。
自惚れかも知れないけれど、この人が泣く場所を提供できるのは何故か他の誰でもない自分だと確信があった。
翔くんと大ちゃんがどうして別れたのか、それをなんとなく理解したのはこういうところだと思う。
大ちゃんは翔くんの前で泣けないし、翔くんは大ちゃんの前で泣けない。
2人の最大の間違いはそういう弱みを相手に見せられない所だ。
お互いに笑顔でいたいんだ、と言っていた。
それはそれで良いことだと思うけれど、だけど恋愛ってそんなものだけじゃどうしようもないから。
激情の上に成り立つそれを、無理矢理押さえつけて、なんて。
そんなの間違っている。
お互いに言いたいことも言えない関係は、長くなんて続くはずないんだ。
部屋の隅っこと隅っこで、まるでお互いなんて存在しないかのように目もあわせない2人。
仕事の時しか顔を見ないなんて、そんな悲しい関係ないよね。
正直に言えば、どうにかしてあげたい、と思う気持ちと。
今ならば、手に入るかもしれないと思う浅ましい気持ちが。
心の中を行ったり来たりしている。
多分、翔くんよりも、自分はもっと大ちゃんを上手に愛せる事が出来る。
ねぇ、俺、とっちゃうよ?
心の中で、何も気にしてないって顔で本を読んでる翔くんに語りかける。
ズルイと罵られようとも、裏切りだと蔑まれようとも。
どうしたって欲しいものはあるんだ。
みんな、手遅れにならないうちに、足りないものに気付けると良いのに。
まるで他人事のように、また心の中だけで呟いた。