そんな顔をするくらいなら。
いっそ、おいかけて、ぶちまけてしまえばいいのに。
それでもまだ、せき止めている想いは、いつかきっとあふれ出してしまうに違いない。
今日も強引に、一緒に帰ろうと誘う。
大ちゃんはまた少し困った顔をして、首を振ったけれど、1人になんてしてやれない。
だってその顔の下で、本当は泣いているのだと知っているから、そんな時に1人になんてしてやれない。
本当は1人でいたいって知っているけれど、そんなの俺は許せなかった。
言ってしまえば良い、そう思う。
あんなに辛そうな顔して、翔くんの後姿を見送るくらいなら、すべてをぶちまけてしまえば良いと。
あんな女なんて押しのけて、思ってること全部、翔くんに言ってしまえば良い。
泣いて喚いて、すがりついて、そうすれば翔くんだってきっと。
食事の後、強引にドライブに誘った。
どこか2人きりになれる場所を探して車を運転する。
人気のない場所へつくと、車を止めて、大ちゃんを外へ引っ張り出した。
そうして、静かに抱きしめる。
「…松潤?」
大ちゃんのひどく戸惑った声が聞こえて。
俺は何も言わずに抱きしめる手を、強めた。
「松潤、はなして…?」
苦しいよ、という言葉と共に、軽い拳が胸に当てられる。
申し訳ないような、困ったような声色を含んで。
「嫌だ」
俺はそれに対して否定の言葉を述べて、さらに強く力を込めた。
腕の中の大ちゃんが、さらに困って眉毛を下げたのがわかっても、俺は離そうとは思わなかった。
「…泣けよ」
そうして、随分と前に言った言葉と同じことを言う。
泣いてしまえば良い、そんなに辛いのなら。
どうして、それを必死で我慢する必要があるのかわからない。
本当は涙もろくてすぐに泣いてしまう人のくせに。
どうして翔くんのことになるとそんなにも感情を表に出すのが下手になるのか。
「…泣けないよ」
小さな、とても小さな声で、大ちゃんはつぶやいた。
俺は首を振って、さらに背中に回した腕に力を込めた。
「違うよ、大ちゃんは泣けないんじゃない、泣かないだけだ」
涙をこらえて、泣かないようにしているだけで、本当はもうずっとずっと泣いている。
隠さなくて良いんだ、泣いて良いんだよ。
大ちゃんにとって翔くんは大事な大事な人だったんだから、泣いたってかまわないんだ。
別れは辛いことなんだって、認めていいんだよ。
そうやって回した腕に力を込めて、耳元で語りかける。
大ちゃんは肩を震わしながら、俺の言葉を聞いていた。
「…いいのかな、認めて」
震える声が、返ってくる。
「いいよ、認めて。悲しいことなんだって、認めろよ」
そう言った途端、胸に当てられていた頭が揺れてさらに下を向く。
泣いているんだとすぐに理解できて、俺は背中をあやすように叩いた。