まどろみ




目が覚めたら、すぐ横に櫻井の顔があって、大野は少しだけ体を仰け反らせた。
声を出しそうになって、慌てて口を閉じる。
気持ちよさそうに寝息を立てている櫻井の顔があまりに穏やかで、起こしてはいけないと思ったのだ。
大野は息を殺すように、心を落ち着ける。
そういえば、昨日は久しぶりにふたりっきりで会うことができて、そして夜も一緒にすごした。
久しぶりだから、と濃密な時間を過ごしたのは当然のことで、随分と遅くまでそれは続いたように思う。
気がつけば自分は眠ってしまっていたのだが、身体回りはキレイに整頓されていて、隣で眠る櫻井の几帳面さが見て取れた。
大野はクスリと笑いを漏らして、そしてその端整な顔立ちをじっくりと見た。
そういえば、いつもは自分が先に起きることがないことに気づく。
特にああいうことをした次の日は、ほとんど、と言っていいほど大野は櫻井よりも目が覚めるのは遅かった。

こんな機会、滅多にないな。

大野はそう思うと、まじまじとその顔を見る。
随分と大人になったのだなぁと思っていたが、寝顔はまだまだあどけない子供のようだった。
なんとなく抱きしめたい衝動に駆られるけれど、もう少しだけその顔を見ていたくて。
うずうずとする欲求を抑えて、そっと髪の毛を撫でるだけで我慢をする。
薄茶色の柔らかな髪を撫でると、櫻井はくすぐったそうに身をよじった。

なんか、幸せ、かも。

大野はもぞもぞと動く櫻井を見つめながら、さらりさらりと髪の毛を撫でる。
そうしていたらやっぱり抱きしめたくなって、仕方がないから、鼻先にちゅっと音を立てて唇をつけた。
本当は噛み付いてやりたかったけど、さすがにかわいそうに思えてやめる。
そこまでやって、大野は少しだけ面白くなくなった。
いい加減起きるかなと思ったのに、全然起きる気配がない。
いっそ本当に噛んでやろうかなと思って、大野が口を開けて顔を近づけると、閉じていた目がパチリと開けられる。

「あ」
「…何しようとしてんの?」
「……ちゅー」
「…うそだ。噛もうとしただろ?」
「バレてた?」

悪かったよ、とそう言ってお詫びに本当にちゅっと唇に音を立てると、くしゃりと櫻井の顔が崩れた。

「…翔くん、顔がゆるゆる」
「朝から幸せだなぁと思って」

そう言って、頭に手を伸ばされて、同じようにして唇をつけられる。
離れた顔は、さっきよりも更に、崩れている。

「…朝から馬鹿だね」
「馬鹿でい…ふぁあ」

櫻井が、顔をにやけさせながらも、口に手を当てて大きなあくびをする。
起きたてで未だ眠たいのか、そのまま目をこすった。

「ねむい?」
「ん…ちょっとね」
「まだ寝る?」
「…寝てもいい?」
「いいよ。寝るなら、おれもねる」

そう言って布団をかぶり直すと、櫻井の腕が、大野に伸びてくる。
不思議に思って首をかしげると、するりと大野の頭の下に手を入れられた。

「うで、だるくなるよ?」
「いーよ、それも愛なら、受け止めます」
「…ばーか」

大野はそう呟くと、身体を櫻井に寄せた。
すると大野の頭の下にある腕とは別の、もう片側の腕が背中に回る。
そのぬくもりに、大野はひどく安心すると、静かに瞳を閉じた。





相互のリクエスト。テーマ「腕枕」