恋してるみたいだ。




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あれから数日。
桜井の悩みはますばかりでひとつも解決していなかった。
最近では大野の顔がまともに見れなくなって、目線を外しての会話は大野だけでなく他のメンバーにも不審がられているようだった。
このままではいけない、となるべくこのことは考えないようにしていたのだけれど。
気が付けば目線を逸らしていたはずの大野に視線を合わせている。

「翔くん?」

ぼうっと大野を見ていた桜井の頭上から、声が降ってくる。
気付かない内に相葉が自分の真横に立っていた。

「あ、ああ、なんだ、なに?」

動揺を丸出しにして、返事をすると、相葉は顔をしかめた。

「翔くん、最近変じゃない?」

つい数日前に、大野からも言われた言葉を言われる。
それは多分、相葉だけでなく、他のメンバーからの言葉でもあるのだろう。

「変じゃ、ない」

自分でも変だとわかっているけれど、思わず否定の言葉を述べる。
自分では今の状態を説明することは出来なくて、あんなことを思ったなんて知られたくなくて。
だけれど、相葉はその返答を聞くと、きっぱりと言い放つ。

「変だよ、悪いけど。どう見たって変だし、変じゃないって本気で思ってんの?」

その言葉に思わず、下を向いてしまう。
相葉は桜井よりも年下のくせに、時々大人びた表情でこうやって強気になる。
その表情は、どうでもよさそうにとりあえず聞いてるみたいにも見えるけれど、本当は心配してくれているのだろう。
だけれど、桜井には答えられない。

「てか、リーダーと何かあったの?」

黙ったまま視線を外して、俯いていると図星を指される。
でも正確には大野君と何かあったわけじゃないけれど、あったのは自分だけで、大野は何も知らないのだ。

「…いや、何もないけど」
「じゃあなんで、そんなにリーダーのこと見てるくせに、話すとき、目線逸らすの?」
「…それは、その」
「翔くん、変だよ。まるで、リーダーに恋してるみたいだ」

―――恋してるみたいだ。

何気なく、たとえて言った一言だったのだろうと思う。
だけれどその、言葉に胸が激しく波打った。
どくん、どくんと、音を立てている。
相葉の声が桜井の頭の中で繰り返された。
まさか、そんなはずは、ない。

「そんなわけ、ないだろ」
「たとえ話だよ、ばか」

震えそうになる声を抑えて、慌てて反論すると相葉は当然とばかりに言い返してきた。
そうだ、例え話だ。
そんなはずない、これが恋であるなんてこと、ありえない。
だって、自分は男だし、大野だって男だし、今までだってずっと女の子が好きだったし。

だから、そんなこと、あるはずないのだ。

桜井はまるで言い聞かせるように、自分の中で何度もその言葉を繰り返した。


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